「まだ遊んでたいよ〜」
小さな男の子がお母さんの顔を見上げている。
「また遊びに来たらいいよ」
僕は笑ってバイバイと手を振った。
東京から来たという三人家族は
大きな荷物を背負って歩き始めた。
40分歩いて、丘向こうの牧場へ行くそうだ。
雲間からさす暖かな日差しに、畑から湯気がのぼっている。
「こんな日は気持ちがいいだろうなぁ」僕は玄関をしめた。
ところが
ほんの数分で大粒の雪が降り始めたのだ。
みるみる暗くなり、風がびゅうびゅう吹いている。
あんな大荷物ではあの子を背負う事もできないだろう。
あの男の子の小さな足を思い出して
僕は思わず車でお店を飛び出した。
お店から牧場までは一本道。
雪はますます激しさを増す。
・・・でも いないのだ
走れど走れど三人の親子は見えない。
とうとう牧場についてしまった。
慌てて引き返し、どこかで雪を避けていないか目を凝らす。
でも いないのだ。
おもちゃ屋に帰ってきてしまった。
雪も止んで、日差しがでてきた。
あんなに大荷物のなのに、
大きなヘリコプターのおもちゃを買って下さった。
きっと、あのヘリコプターに乗っていったのかな。
ローラが笑って僕を見上げている。