美瑛の丘の心象風景  おもちゃ屋さん日記

美瑛の丘の上にある 小さなおもちゃ屋さんからの物語

父の靴


▲GXR Mount A12 + LEICA SUMMICRON-M 35mm 4th-7 f/2.0





     静かに雨が降っています。
     お昼をすませて、
     僕は靴と話しながらコーヒーを飲んでいます。



     もう20年が経ちました。



     当時父が大切にしていた、この無骨な靴がまぶしくて
     何度も欲しがった事を思い出します。
     「とうとう取られたか」父は笑っていました。


     あれから靴底も2回交換し、
     靴の中の革も穴が開いては職人さんに貼りなおしてもらいました。
     今では自分で修理するほど。
     ちょっと重いけれど、コツコツという音が好きな父の靴。
     この靴で色々なところへ一人旅をしたなぁ。


     いつの間にか隣にもうひとつ軽い靴音が並び
     いつしか可愛い小さな靴も、元気な足音をさせて歩いています。
     この靴を愛した父の姿はもうありません。





     父の遺した美瑛の家に移り住み
     僕は家族と日々を歩いています。


     父が生きていたら、どんな話をしたかな


     コツコツコツ
     一緒に歩いているような暖かさを感じて
     今日も前を向いて歩きます。
     靴音に面影をしのびつつ・・・



美瑛の丘のおもちゃ屋さん  店長日記